台北駐日経済文化代表処より、台湾の総統選挙の最終盤の状況を視察しないか、とお誘いを頂き実質2日間の強行軍でしたが、高木美智代衆議院議員と台北へ行ってきました。


3月20日 9:30

蕭美琴 民進党国際事務部主任と会談

選挙本部(写真1、2)に早く到着したので、1Fで行われていた記者会見(写真3)を見学。

9Fの会見場へ。国民党立法委員の乱入事件があった為、エレベーターにガードマンが配置されていた。

 逆転勝利のロゴ入りのTシャツに薄手のジャンパー姿で蕭さんが現れる(写真4)。2年前の会談を覚えていて、「写真を頂き、ありがとう」と。選挙戦の疲れか少しヤセられたように感じた。

(談)

・私達は逆転勝利を目指している。最後は、少差で勝負が決まると思う。

・今回の選挙は台湾国民にとって大変重要。なぜなら、国民党の政策である、

中国との共同市場の設立は、実質独立状態にある台湾を、実質的に中国と統

一した状態にさせるものであるから。

・先の立法院選挙では、国民党が大勝利したが、国民は一党独裁政治が復活す

るのではないかと、大変憂慮している。

立法院における国民党の議員態度大きい。4名の国民党議員が、この本部の

13Fに突入した事実をみてもそれは分かる。

・総統選挙において国民党が勝利すると台湾の民主化後退する。民進党は最後の瞬間まで戦う。         

・選挙の争点は2つ。

@ バランスの良い、コントロールできる国会(立法院)をつくること。

A 中・台共同市場反対。

・今回のチベット騒動に対する中国の対応について、どう思うか?との問いに

一民進党は、人権を重視するので、チベットの立場には同情を禁じえない。

中国の圧迫を受けてきたチベットは、このままでは文化・自由を守れな

い。

台湾も昔同じ立場だった。台湾語を昔は、自由に話せなかった歴史があ

るので、チベットについては、自分の事の様に関心がある。

チベットが中国に鎮圧されたのは、昔、台湾が国民党にされたのと似て

いる。

今回の事件は、台湾人に昔の台湾を喚起させる。

・中・台共同市場政策は、チベットの例を見れば誤りであることは、すぐ分かる。

チベットの人達は、ラサまで敷かれる鉄道は経済発展につながると期待していた。結果的には、鉄道を使って漢民族が

たくさん入ってきて、チベット民族は少数派になってしまった。

・今回のチベット問題を選挙戦術として、どう取り入れようとしているのか?

―チベットの事態は、選挙戦術にはなかった。台湾を第2のチベットにさせない様、総統候補としては、強調する必要

がある。両候補ともチベット問題について発信している。馬候補は最初、批判を控えていたが、途中から中国を批判するようになった。

・民進党が1月の立法院選挙で敗北した原因は?

―民進党の得票率は38%で前回と同じなのに小選挙区の議席は2割になってしまった。国民党は51%の得票率で

 3/4を超える議席を得た。今の議席数は、民意を代弁していない。台北市内でも30数パーセントの得票率で台北

市長選でも40%を超える得票率なのに、国民党は8議席、民進党は0だった。

・仮に、謝候補が勝利しても、立法院が罷免権を持っており厳しい政権運営を強いられるのでは?

―謝候補は、立法院の現実をよくわきまえている。与・野党の対決を避ける為、行政院長は国民党に受け入れられる人

 を選ぶだろう。いわば、共同統治だ。民進党は最後の一議席(総統の議席)を維持しなければならない。

  行政権は、国民党にまかす。自分は小さい総統でよい。台湾を見守る役

目という大きな使命感を持っている。

その為に、政治から離れようとしている私達も一生懸命やっている。

蕭さんは、馬候補と経歴が似ているが?

―年代が違う。馬候補にも、同じ愛国心があったと思う。馬候補は、将経

国側に立つ事が愛国心だったが、私は、台湾の民主化を進める側に立つ。

 馬候補は元来、総統の直接選挙に反対の立場だった。

・謝候補はどんな方?

謝候補の特大ポスターの前で6

―美麗島事件の弁護人。反対野党の政治家。陳総統と経歴似ているが、性

格に大きな違いがある。

 

・謝候補が勝てば、外交部長との噂があるが?

―組閣の権利は国民党の意思次第。疲れたので半年位休みたい。日本への短期留学の資格を取得した。

 

頭脳明晰な方である。

立法院選挙の党内予備選に敗れ、立候補できなかったとの事であるが、正直「もったいない」と思った。来日した際、温泉施設で、台湾の方にサインを求められた程の有名人。日本で疲れを癒して頂きたい。

10:00〜

民進党選対本部から国民党選対本部への移動途中、昔の台湾の街並を再現した施設を見学。日本の昭和30年代を想起。

【国民党選対本部の政策ボード】

11:00〜 

国民党選対本部で江 丙坤 党副主席と会談。江副主席は、2年前に台北でお会いした時と同じ様に、台湾政局経済現状レポート(12頁)を資料に、台湾の政治経済情勢を詳細に説明して下さいました。

@     台湾における最近の各種選挙の得票状況を説明の上、高雄市長選挙で、国民党候補が民進党候補に1114票差で敗れたのは、選挙戦最終日に、民進党が記者会見で、国民党候補者に買収の疑いありと指摘し、反論する機会のないまま投票日を迎えてしまった、と悔しがっていました。

A     立法院議員選挙後の両総統候補の支持率の比較について。

江丙坤・党副主席(私の右隣)と
謝文政・前立法委員(右端) 10

 意思表示しない層が多くなった。マスコミ各社は、国民党寄りが多

い。選挙民は、問いかける社に対応しているので、支持率が高いか

らといって安心してはならない。国民党は若い支持者多い。60才

以上、小学校卒、南部弱い。

B     残り2日間の選挙戦で予想される事。

ア 馬候補、謝候補に対する銃撃

イ 李登輝元総統の謝候補支援

ウ 李 遠哲(ノーベル科学賞 受賞者)の謝候補支持

エ 陳総統の奥さんの問題

オ 馬候補のアメリカのグリーンカード問題

何が起きても不思議ではないが、何が起きても勝利はゆるぎない。

C     民進党は、国民党の政策では、中国から農産物、労働力、学歴が押し寄せてくると宣伝しているが、そんなことはありえない。
立法院の圧勝は予想をはるかに超えるもの。
馬候補にはカリスマ性がある。

D     台湾経済について
国民党統治下の年平均経済成長は8.4%で世界一。
民進党政権で3.84%まで落ちた。
経済格差が拡大し、大衆の不満拡大。
加えて汚職が多く、人事も不公正。
民進党の謝氏と蘇氏は過去、中傷合戦をくり返していた。
私から、日本の経済成長と比べると、立派なものでは?と尋ねたところ、
日本は先進国だから、3%以下の成長率でも大丈夫。
開発途上国は6%以上でないと成長しない。
7年間所得が伸びないから、消費も伸びない。
民進党の「台湾独立」という主張は平和を脅かす。
リスクをとれない。中国の黒字なければ、台湾もたない。

E     民衆の統一・独立あるいは現状維持の見方に関する世論調査は興味深い。民衆の見方は政党議席に反映している。

F     「一つの中国」について
1992年両岸関係責任者同士による共同了解事項である。「一個中国・各自表示」は、2005年4月30日連戦・ 錦濤会談の結論であり、中国国民党の政策綱領である。両岸とも一つの中国を堅持する。ただし、一つの中国の内容は各自口頭で表現する、との意。
同じ領土の上に、2つの政権があっても良い。
台湾にとって一つの中国とは、中華民国である。
日本流の玉虫色決着により、両岸の政治問題を棚上げ、経済と文化の交流により中国の民主化を図る。
中国の経済良くなれば、ODA等にもしっかり取り組め、国際社会で尊敬されるようになる。

G     馬候補の評価
ア クリーンである。
イ 正直、法律大事にする(法務大臣を経験したことにもよる)
ウ 愛国心強い。
エ 人権主義者 天安門事件―毎年抗議 2.28事件―現地へ謝罪に行く
オ 日本では、反日のイメージ強いが、知日派になろうと努力している。台湾海峡のピースメーカーになる。
カ チベット事件、オリンピックの参加に影響。チベットは中共の領土。台湾は違う。同じに並べるのは良くない。


2年前と変わらず、様々な問題を的確に解説して下さいました。選挙結果については、絶対な自信を持たれている、と

感じました。馬総統の下で、行政院長に就任されるのではないでしょうか。

 

12:00

鴻基・亜東関係協会会長・歓迎昼食会。陳会長が、私が絶対に行ったことのないレストランということで、真的好海鮮レストランで、歓迎宴を開いて下さいました。陳会長とは、1999年9月の台中大地震で訪台した時以来のお付き合いで、当時の状況を含め、他方面にわたり意見交換ができました。

 

14:30

故宮博物院見学

改装された故宮博物院を見学しました。学芸員の方が丁寧な説明をして下さり、新たな発見がありました。

 

16:00

外務大臣主催 茶会(於 台北賓館)

11 12 13

台湾の迎賓館で開かれた茶会に招かれました。世界中からの総統選挙視察団でごった返していました。台湾にとっては、国際的プレゼンスを示す重要な機会であるようです。1997年に、地方行政委員会の視察で、当時オランダ大使としてお世話になった池田大使が、交流協会の理事長として出席されていて、なつかしくお話しをさせて頂きました。(写真12)

18:00

許世楷・台北駐日経済文化代表処 代表主催歓迎夕食会

許代表が、国際会議と総統選挙の投票の為、台北に宿泊されており、夕食にお誘い下さいました。許代表の弟さんの御家族もアメリカから投票の為、駆けつけており、同じレストランで食事をされていました。台湾の皆さんの台湾への熱い思いを実感しました。

20:30

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黄 俊雄・布袋挺馬蕭大会・視察

黄さんは、台湾一有名な指人形劇団の主催者。テレビ番組も持っているとの事。

国民党が馬候補の支持者を集め、同劇団のショーを開き、盛り上げていた。忠順廟という道教のお寺の境内で開催していたのには少々驚かされました。

3月21日

9:15

取調べの可視化の視察の為、法務部調査局に車で向かっていたところ、選挙の街頭演説に遭遇。車を降りて近づいたところ、TVカメラの放列。

17 18 19

誰が演説しているのか尋ねたところ、馬候補本人との事。少し近づいてみたところ、張課長の知り合いの国民党立法委員と会い、日本から来た旨伝えると、馬候補がこのジープに乗ってくるから、ジープの前で待つようにと。

群集の中から、馬候補が現れ、しっかり握手。選挙戦最終日の為、やはり疲れているように見えました。

9:30

法務部調査局を訪問。(写真20)

20

同局外車室・成 漢生 副主任らが出迎えてくれ、30分程概要説明を受け、展示室も案内して頂きました。調査局は、両岸関係や麻薬、銃器、重大経済事犯等を扱い、警察と役割分担をしているとの事。

法務部調査局外事室 李克成課長が、私共の車に同乗してくれましたので、取調べの可視化導入の経緯・背景について

率直に尋ねました。

李課長は、警察や調査局の取調べに対し、被疑者より苦情の申立てが相次いだ事、逆に、被疑者が取調官より暴力・脅迫を受けたという虚偽の申立てをする件が増えたり、被疑者が取調官に対し、突然、暴力をふるったりする事案が多発し、「密室での取調べ」という状況を、検証可能な状態にする必要が生じた、と説明してくれました。

 李課長自信も、取調べ中の被疑者が一瞬目を離したすきに、4Fのトイレの窓から飛び降り自殺を図った事があり、直前の取調べ状況を客観的に証明できないと、自分が自殺に追い込んだと受け取られかねない経験をした、と話してくれました。

 可視化の導入により、取調べがやりにくくなったような事があるかと尋ねたところ、全くない、と即答されていました。

10:00

車で20分程移動し、調査局 北部地区機動工作組へ。

私の左隣が林主任     21

玲蘭主任以下、多数の調査官が出迎えてくれました。(写真21)直ちに、取調室隣りのモニター室へ。

最初の取調室では、昨年台北で検挙された大型経済事犯の被疑者が2人の取調官から、取調べを受けていました。マジックミラーを通じて、帳簿の細かな数字について、一つひとつ確認をしている状況が良く分かりました。被疑者が足を組みながら質問に答えており、服装もかなりラフでしたので任意の取調べかと勘違いするような状況でした。

被疑者の1メートル位後ろには、弁護人の席があり、少々年配の弁護士が、ボーッと取調べを見ていました。

弁護人は、取調べに対し具体的なアドバイスも可との事でした。

日本では、弁護人の同席は法律上も認められていないので、弁護士会等が同席を認めるよう運動している。但し、取調べ全部に同席するのは弁護士の負担が重すぎる、と私が説明したところ、台湾では弁護人の同席の費用が1時間当り、1万円〜3万円で、結果として、金持ちしか弁護人の同席が保障されていない、と説明がありました。

この被疑者には、当初3人の弁護人が同席していたが、今では1人になってしまった。お金が続かないのでは。とのコメントもあり、成る程と実感させられました。

モニター画面には、取調べの状況が全て写し出されており、入室時から退出時まで全て録音・録画されていました。

反対側の取調室も、モニター室からのぞかせて頂いたところ、若い弁護士さんが必死に取調べ状況をメモしていました。先程の弁護士と態度が全く違うが?と尋ねると、年配の弁護士から派遣された弁護士で、報告の必要があるのでは、とのコメントがありました。

弁護士になりたての頃の自分の姿を思い浮かべました。

 

この後、取調室を見学させて頂きました。

取調室のドアには、105詢問室 INTERROGATION ROOMと札がかかっていました。(写真22

ドアを開けると、机が真ん中に置かれ、向こう側に取調官2人の席がありました。(写真23)取調官の背中側の窓の上部に録画用のカメラが設置されていました。(写真24

22 23 24

取調官と机を挟んで反対側に被疑者用の椅子。その後方に弁護人の席があります。弁護人の椅子は、メモが取りやすい様に工夫されていました。(写真25

25 26

 取調官の席の後ろに、ペットボトルが山積みされていたので「これは?」と尋ねると、私にコップを出してくれペットボトルからミネラルウォーターを注いでくれました。被疑者から要求があれば、同じ様にすると笑っていました。(机の上にコップが見えるでしょう。(写真25))

机の上には、鉛筆等、凶器になりうる様なとがった物は一切置かないとの事でした。(写真26 

被疑者席左側の壁と、被疑者席の前の机の上には弁護人選任権・黙秘権等の被疑者の権利や、取調べの録音・録画についての説明書が貼られていました。

(写真27 28

27 28

取調べ時間の経過が分かる様に、被疑者から一番見やすい位置に時計が掛けてありました。(写真29

29 30

取調官席の右側奥にトイレが設置されていました。壁は、被疑者が自傷行為に及ばない様、柔らかい素材で作られ、窓も飛び降りることの不可能な位置に設置されていました。(写真30)


韓国で取調べの可視化を視察した時にも感じましたが、あらゆる事態を想定した工夫がなされているな、と思いました。

 林主任の執務室で、取調べの可視化について、種々意見交換をしていたところ、私が取調室に入ってから退出するまでの間を録音・録画したCDを準備してくれました。以下はCDの再生です。

台湾 法務部調査局 調査處

2008年3月21日

 

調査官  ・録音は(机の上の)録音機で、録画はこちら(窓の上部)のカメラになりま

す。壁は柔らかい素材です。ぶつかって自殺するのを防ぐためです。

富田先生、被疑者側ではなく、弁護士側の椅子にどうぞ。録画してみます。

 

富 田  (弁護士の椅子に座る)

 

調査官  ・取り調べの時間が長引くと、弁護士立会いの場合は弁護士のお弁当も用意さ

 れます。

 

富 田  ・後ろに水があるので驚きました。みんな、被疑者も水を飲んでいましたね。

 

調査官  ・机にはとがった物は一切、置いておりません。ペンも置きません。自殺防止

のためです。

     (先ほどのお水をコップに入れて下さり、富田へ)お水をどうぞ。

      お手洗いを見てほしいのですが。トイレの鍵も閉められません。壁も、自殺
         防止のため、柔らかい素材で作られています。灰皿も置きません。

 

富 田  ・(机をさして)義務と権利と書いてありますね。

 

調査官  ・証人についての義務と権利が書いてあります。自分に不利な場合は証言の拒

否ができるとはっきり書いてあります。法律の根拠も書いてあります。

 

富 田  ・(壁の貼紙を見て)注意事項と書いてありますね。

 

調査官  ・弁護士の注意事項が書いてあり、取調べの過程の妨害・秩序の妨害・影響する

行為は禁止されています。

富 田  ・日本より、進んでいます。写真を撮ってもいいですか?

 

調査官  ・入室されてから、全部、録画されていますので、後程、CDRを差し上げま

す。

      全部がデジタル化されており、録画・録音がされていますので、改ざんする

ことは難しいです。

 

富 田  ・素晴らしい。

 

(林主任と名刺交換)

 

調査官  ・是非、司法協力について覚書をしてほしいとお願いをいたしまして。というお話をしました。

 

調査官  ・是非、やっていただきたいのは、証拠の保存。一番大事なのは、証拠。

例えば、日本からいただいた証拠が、台湾の裁判官が使える証拠になるよう

に。それには、覚書が必要なります。やはり、情報交換しかない。情報が証

拠になります。

 

富 田  ・そのことを言っていたのかな、昨日のソウさんは。

 

張課長  ・知らないと思います。私の部下なので。そういう関係者から若干、伺っただ

けの話だと思います。

     

調査官  ・日本において4つの分野で、情報交換の枠組みがあります。

       軍事転用の可能性があるハイテク産業

       マネーロンダリング

       コンピューターのハッカー

       薬物や麻薬

    ・今の段階では情報しかできない。情報だけあっても、立証するのが難しい。情報の交換に限らず、証拠の収集がそのまま裁判に使える証拠になれば、両方にとっていい話だと思います。
・今までの録画がCDRになるまでに時間がかかりますので、上に行ってお話をしましょう。


12:00

張課長おすすめの鼎泰豊よりおいしいと評判の點水樓で昼食。

16:45

台北発 C1−106便

20:40

成田着